2020年11月16日(月) 13:00-14:30

第20回 フォトニクス・イノベーションセミナー

開催日 2020年11月16日(月) 13:00-14:30
開催場所 オンライン (Zoom)
主催 東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構
共催 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
技術研究組合 光電子融合基盤技術研究所(PETRA)
協賛 一般財団法人 光産業技術振興協会(OITDA)
参加費 無料

東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構では、フォトニクス・イノベーション共創プログラムを推進しています。本プログラムは、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)プロジェクト「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術」に関わる成果普及と人材育成を目的としています。

フォトニクス・イノベーションセミナーでは、人材育成の一環として光電子融合科学技術の基礎からシステム応用に至る技術について、気鋭の研究者による講義形式でわかり易い解説を提供しています。今回は、前回に引き続きオンライン開催で、東京大学 岩本敏先生にトポロジーを活用したフォトニクスの基礎と新たな展開についてご講演いただきます。

対象

光技術者および関係の社会人、大学院・学部学生

プログラム

司会 竹中充(東京大学工学系研究科電気系専攻 教授)

13:00 開会挨拶

荒川 泰彦(東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構 特任教授)

13:05 講義

トポロジカルフォトニクス:トポロジーを活用した光導波路の可能性

岩本 敏(東京大学先端科学技術研究センター 教授)

講演要旨

物性物理の分野では、“トポロジー”の概念を基礎として新しい物質相や材料が多く見出され、その特徴を活かしたデバイス応用が議論されている。この物性物理で進展してきたトポロジカル物性科学の概念を、光や音波などの古典的波動の制御に利用とする試みが、近年注目を集めつつある。特にバンドトポロジーの考え方を適用し、電磁波や光の新たな制御やそれを用いたデバイスの可能性を探求する分野はトポロジカルフォトニクスと呼ばれている。前回のセミナーでは、バンドトポロジーについて、一次元系を例に取り上げ解説するとともに、光共振器への応用について紹介した。

一方、構造の欠陥や導波路の急峻な曲げがあっても高効率な光伝搬が実現できるトポロジカルエッジ状態を用いた光導波路は、トポロジカルフォトニクスの応用の一つとして高い関心を集めており、近年では半導体ナノフォトニクスのプラットフォームでの研究も進んでいる。

本講演では、トポロジカルフォトニクスの概要、バンドトポロジーについて、改めて簡単に紹介したのち、2次元系における光トポロジカル相に現れる1次元トポロジカルエッジ状態を利用した光導波路について、我々の成果の含めて最近の進展を紹介する。

参加者数

75名

概要

2020年11月16日(月)に、第20回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催いたしました。オンライン形式では二回目となる今回も、日本各地の学生・社会人など多数の方にお集まりいただき、当日参加者数は75名となりました。

今回は、第15回のセミナー(2019年2月)でもご登壇いただいた東京大学先端科学技術研究センター教授の岩本敏先生に、「トポロジカルフォトニクス:トポロジーを活用した光導波路の可能性」と題してご講義いただきました。はじめに、トポロジカルフォトニクスの特徴について改めて解説いただきました。トポロジカル物性科学の概念を光の制御に展開したものであり、光のもつ“トポロジカル”な性質を活用したフォトニクス技術であること、構造揺らぎに強い光伝搬や後方散乱のない一方向性導波路などが実現できる可能性のあることが紹介されました。その上で、バンドトポロジーやエッジ状態などの概念について、なじみのない人にもできるだけわかりやすいように工夫された説明がありました。さらに、トポロジカルフォトニクスを実験的に示すための「処方箋」が具体的な実現例とともに示されました。後半は、関連する先生のご研究の成果のいくつか、具体的には急峻な曲げがあっても高効率な光伝搬が実現できるバレーフォトニック結晶導波路をInAs量子ドット活性層を含むGaAs系で実現された成果や、トポロジカルスローライトフォトニック結晶導波路を近赤外領域で初めて実現された成果についてご紹介いただきました。トポロジカルフォトニクスは、半導体を中心とした集積フォトニクスへの応用を目指した研究が進展しており、微小光デバイス、高密度光集積回路への応用の可能性が期待される比較的新しい研究分野です。今回のセミナーでは、この分野の実験や理論の展開が近年加速度的に進みつつあることが豊富な実例とともに示されました。一方、トポロジカルでないとできない機能の発見・実現が課題のひとつであることにも触れられ、新しい分野を切り拓く研究の実相についても学ぶ機会を得られました。

今回も複数の参加者からの質問に答える形で講演後には活発な議論が行われ、現実には距離を隔てて集まっている参加者が、同じ時刻に仮想的なセミナー会場というひとつの場所を確かに共有できていたことが印象的でした。今後も気鋭の研究者によるセミナーを予定しています。引き続き、奮ってご参加ください。

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