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    2020年12月16日

    参加者数

    53名

    概要

    2021年1月21日(木)に、第21回フォトニクス・イノベーションセミナーをオンラインで開催いたしました。当日参加者数は53名でした。

    今回は、大阪大学大学院工学研究科准教授の五十嵐浩司先生に、「光ファイバ通信におけるディジタル革命 ~符号化変調・光空間多重技術~」と題してご講義いただきました。現在の大容量光伝送システムを支えるコヒーレント光伝送技術にディジタル信号処理技術がいかに重要な役割を果たしているか、前半では両技術の融合前後における研究開発の経緯を振り返り、後半ではポストコヒーレント時代の光伝送技術のうち掲題の二つの技術に焦点を当てて詳しく解説いただきました。まずはじめに、直交振幅変調・コヒーレント受信方式の採用にあたっては偏波変動と位相雑音の克服が課題であったことが示されました。また、アナログ信号処理によるこれらの課題解決の取り組みが1990年代に試みられたものの、主にフィードバック制御の困難さのために一旦行き詰ったこと、そして2000年以降に光通信速度を上回るアナログ・ディジタル変換器(ADC)が実用化され、受信信号を直接ディジタル領域に変換することで偏波自動追尾や位相同期が可能になったこと、が紹介されました。これが光通信における”ディジタル革命”となり、現在の大容量光伝送システムの実用化に至ったことがよくわかりました。後半は、光符号化変調技術と光空間多重伝送技術の最新研究動向について、多数の参考文献と先生ご自身の研究成果も交えて詳しくご解説いただきました。フォトニクスの代表例である光ファイバ通信の高速・大容量化を、エレクトロニクスの最先端である集積回路の微細化・高性能化やディジタル信号処理技術が支えているという事実に改めて気づかされ、関連分野の研究者にとっても大変興味深くまた有意義なお話が聴けた機会となりました。

    ご講演終了後はセミナー終了予定時刻いっぱいまで途切れることなく活発な質疑応答や議論が行われ、身近な技術の開発経緯や最新研究動向に対する参加者の関心の高さがうかがえました。今後も気鋭の研究者によるセミナーを予定しています。引き続き、奮ってご参加ください。

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    2020年11月02日

    参加者数

    75名

    概要

    2020年11月16日(月)に、第20回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催いたしました。オンライン形式では二回目となる今回も、日本各地の学生・社会人など多数の方にお集まりいただき、当日参加者数は75名となりました。

    今回は、第15回のセミナー(2019年2月)でもご登壇いただいた東京大学先端科学技術研究センター教授の岩本敏先生に、「トポロジカルフォトニクス:トポロジーを活用した光導波路の可能性」と題してご講義いただきました。はじめに、トポロジカルフォトニクスの特徴について改めて解説いただきました。トポロジカル物性科学の概念を光の制御に展開したものであり、光のもつ“トポロジカル”な性質を活用したフォトニクス技術であること、構造揺らぎに強い光伝搬や後方散乱のない一方向性導波路などが実現できる可能性のあることが紹介されました。その上で、バンドトポロジーやエッジ状態などの概念について、なじみのない人にもできるだけわかりやすいように工夫された説明がありました。さらに、トポロジカルフォトニクスを実験的に示すための「処方箋」が具体的な実現例とともに示されました。後半は、関連する先生のご研究の成果のいくつか、具体的には急峻な曲げがあっても高効率な光伝搬が実現できるバレーフォトニック結晶導波路をInAs量子ドット活性層を含むGaAs系で実現された成果や、トポロジカルスローライトフォトニック結晶導波路を近赤外領域で初めて実現された成果についてご紹介いただきました。トポロジカルフォトニクスは、半導体を中心とした集積フォトニクスへの応用を目指した研究が進展しており、微小光デバイス、高密度光集積回路への応用の可能性が期待される比較的新しい研究分野です。今回のセミナーでは、この分野の実験や理論の展開が近年加速度的に進みつつあることが豊富な実例とともに示されました。一方、トポロジカルでないとできない機能の発見・実現が課題のひとつであることにも触れられ、新しい分野を切り拓く研究の実相についても学ぶ機会を得られました。

    今回も複数の参加者からの質問に答える形で講演後には活発な議論が行われ、現実には距離を隔てて集まっている参加者が、同じ時刻に仮想的なセミナー会場というひとつの場所を確かに共有できていたことが印象的でした。今後も気鋭の研究者によるセミナーを予定しています。引き続き、奮ってご参加ください。

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    2020年09月02日

    参加者数

    72名

    概要

    2020年10月12日(月)に、第19回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催いたしました。今回は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、当セミナーシリーズでは初となるオンライン形式で行われました。参加者は72名で、講師の松田先生をはじめ東京以外にも日本各地から学生や社会人の方々に多数お集まりいただき、距離を感じさせない新しいセミナー様式の可能性を改めて認識する機会となりました。

    はじめに、主催者を代表して荒川泰彦東京大学特任教授より挨拶があり、オンライン化の経緯と当セミナーシリーズの目的、意義について説明がありました。

    続いて、東北大学准教授の松田信幸先生より「光集積回路を用いた量子情報処理」と題して講義が行われました。はじめに、光を用いた量子情報処理の基本的な事項や研究の背景などについて説明があり、前半では主に小型で安定性に優れた集積量子フォトニクスに関するこれまでのご研究の成果が紹介されました。熱光学位相シフタによって回路レイアウトを変更可能な、光回路版FPGAともいわれるユニバーサル線形光学回路を用いた量子情報処理の実証実験の成果と、量子シミュレーションなどの応用例について詳細にお話しいただきました。後半では、最近の成果として、自由空間光回路をシリコンチップ上に集積・小型化した例などが紹介されました。 光を用いた量子情報処理は、光ファイバ通信との相性の良さや、室温でも安定に動作可能である点など他の量子情報処理デバイスにはない特徴を有していますが、大規模回路の集積化が課題の一つでした。今回紹介された事例のように光集積回路の関連技術が順調に発展すれば、近い将来それらを用いた量子情報処理が実用化される可能性も高まるであろうということを、分かりやすくご解説いただきました。

    オンライン講義では、場の雰囲気を共有したり対面同様の濃いコミュニケーションをとったりすることが必ずしも容易ではない側面もありますが、今回は複数の参加者から口頭あるいはチャットで多数質問が寄せられ、通常のセミナーとほぼ変わらない活発な議論が行われました。今年度は、オンライン化に伴い原則毎月、毎回一名の講師をお招きしてセミナーを開催する予定です。引き続き、奮ってご参加ください。

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    2019年11月13日

    参加者数

    159名

    概要

    2019年11月26日(火)に、シリコンフォトニクス、光電子融合技術およびナノフォトニクスに関する国際シンポジウムISPEC2019と共同開催で、第18回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催しました。今年で9回目となる同国際シンポジウムは例年海外の著名研究者を多数招聘して開催され、シリコンフォトニクスの最新研究開発動向を俯瞰し、同分野の将来展望を議論することのできる貴重な場です。セミナー開催日である26日の参加者数は159名で、会場は熱心に聴講する受講者でほぼ満席となりました。

    はじめに主催者を代表して技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)の田原修一専務理事から開会の挨拶があり、続いてフォトニクス・イノベーション共創プログラム主宰者でもある東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の荒川泰彦特任教授から、経済産業省/NEDO未来開拓研究プロジェクト「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」におけるPETRAおよび東京大学の最新成果を中心とした光電子融合技術の進展に関するKeynote講演がありました。

    続いてPlenary講演として、マサチューセッツ工科大学(MIT)のL.C.Kimerling教授とインテル研究所のH. Rong博士より各1件の講演をいただきました。都合により急遽遠隔講演での登壇となったKimerling教授は、2019年のIntegrated Photonic Systems Roadmap – International (IPSR-I: 集積シリコンフォトニクス・光電子融合技術ロードマップ国際委員会 [1月東京・3月米国サニーベール・6月ベルリン・10月ボストン])での議論について報告されました。今後に向けた技術開発の動向の例として、消費電力密度の上昇が集積度向上に対する障壁であることを具体的な数字を挙げて解説され、その解決のために複数の技術開発が進んでいることを紹介されました。

    次に登壇されたRong博士は、インテル社におけるシリコンフォトニクス集積プラットフォームの研究開発の現状と展望についてお話しされました。特に、高速(>100 Gb/s)・低消費電力(< 10 pJ/b)の光リンクを実現するために進められている研究の最新成果について詳しく紹介されました。シリコンフォトニクスは研究レベルから商用化レベルへと既に順調に技術移転が進んでいることを強調され、情報通信インフラを支える中核ハードウェア技術のひとつとして今後存在感を増していくであろうという展望を示されました。

    Kimerling教授のご講演は遠隔講演でありながらも会場との質疑応答は活発に行われ、シリコンフォトニクス分野の今後に寄せられる関心の高さが伺えました。また、産業界におけるシリコンフォトニクスの実用化最前線について紹介されたRong博士のご講演からは、光電子融合技術の社会実装が確実に進展している様子を改めて実感することができました。このように、今回のセミナーはフォトニクス分野のイノベーションを担う人材育成にふさわしい機会となりました。

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    2019年10月02日

    概要

    2019年10月23日(水)に、第17回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催いたしました。今回は、京都大学卓越大学院プログラム「先端光・電子デバイス創成学」プログラムとの共同主催で同教育プログラムの一環としても行われました。また、昨年に続き京都大学工学研究科附属光・電子理工学教育研究センターとの共催で、関西地区では2回目となるセミナーでしたが、77名とたいへん多くの方々に参加いただき、盛況となりました。

    はじめに、主催者を代表して京都大学卓越大学院プログラム「先端光・電子デバイス創成学」プログラム副プログラムコーディネータの竹内繁樹京都大学教授から趣旨説明を含む開会の挨拶がありました。引き続き、京都大学特任教授でもある荒川泰彦東京大学特任教授より「量子ドットフォトニクスの進展~黎明期から実用化まで~」と題して、量子ドットフォトニクスの研究の歴史、実用化の進展についての講義が行われました。特に、量子ドットの状態密度を反映した量子ドットレーザの唯一無二性:閾値電流の温度無依存性がもたらしたフォトニクスへのインパクトについて詳細な説明がありました。また、近年進展しつつあるシリコンフォトニクス光源や量子情報用単一光子源などへの新たな展開も紹介されました。

    続いて、野田進京都大学教授より「フォトニック結晶の進展と将来展望」と題する講義が行われました。これまでの三次元・二次元フォトニック結晶の研究についてのレビューに続き、Society5.0における現状の半導体レーザの課題が提示され、それに対する解決策のひとつとしてのフォトニック結晶レーザの研究開発動向について詳細な講義が行われました。同レーザはブロードエリアでシングルモード、高出力が期待されるなどのメリットがあり、ビーム広がりが極めて狭いことからLiDAR応用にも特に有望であることが紹介され、さらに熱輻射制御素子などへの新展開を含むフォトニック結晶技術の今後の展望についても言及されました。

    その後、竹内繁樹京都大学教授より、「光子を操る-光量子計測とその展望」と題して光子を用いた量子計測の最近の研究成果とその展望に関する講義が行われました。量子もつれ光子を用いた、従来の光の限界を超えた感度を有する微分干渉顕微鏡、周波数もつれ光子対を用いた、優れた群速度分散耐性を示す高分解能光量子トモグラフィなどの実例の紹介があり、これらの量子光源の集積化・光量子回路の実現への将来展望についてもお話がありました。最後に、京都大学工学研究科附属光・電子理工学教育研究センターのセンター長でもある野田進京大教授から、今後の大学間連携に対する期待を込めた閉会の挨拶がありました。

    いずれの講義でもたいへん活発な質疑応答や議論が行われ、閉会後も白熱した議論が続く光景が見られました。今後とも、光電子融合科学技術の発展に資する基礎的な解説から革新的・実践的応用展開の紹介まで幅広い分野のセミナーを企画・実施いたしますので、奮ってご参加ください。

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    2019年06月13日

    概要

    2019年7月18日(木)に、第16回フォトニクス・イノベーションセミナー(テーマ:『異種材料集積フォトニクスとナノ構造フォノンエンジニアリングの最新動向』)を開催いたしました。産官学の多様なセクターから34名の参加者がありました。今回は、異種材料集積技術を用いたシリコンフォトニクスの新展開とナノ構造によるフォノン制御の物理とその応用についての講義が行われました。

    まず、NTT先端集積デバイス研究所上席特別研究員の松尾慎治様より「化合物半導体異種材料集積によるシリコンフォトニクスの新たな展開」と題して、NTTにおける化合物半導体フォトニックデバイスの異種材料集積に関する最新の研究開発動向についての講義が行われました。シリコンフォトニクスにおける課題とその解決を目指すアプローチの解説に続いて、特徴的な横電流注入埋め込みヘテロ構造を有するメンブレンレーザやマッハツェンダー変調器の異種材料集積などの成果が紹介されました。特に、データセンター内あるいはボード内チップ内光インターコネクション用途に向けたレーザ集積に対するメンブレンレーザの優位性について、性能・機能の観点から丁寧な解説がありました。

    続いて、東京大学生産技術研究所准教授の野村政宏先生による「フォトニクスからフォノニクスへ ~ナノ構造を使った高度な熱流制御~」と題する講義が行われました。研究背景の紹介およびフォトニクスとフォノニクスの類似性・相違点の説明に続いて、Si二次元周期的ナノ構造(フォノニック結晶)を用いたフォノンの波動性に基づく熱伝導率制御、Si薄膜ナノ構造による固体集熱などの研究成果について解説がありました。いずれもフォノンの性質(波動性、平均自由工程内での弾道的輸送特性)を巧みに活用した工学的アプローチとして、フォトニクスとの比較という観点からも興味深い内容でした。さらに、環境発電素子への応用に関して現在進行中の産学連携の取り組みについて紹介されました。

    質疑応答では、いずれの講義でも予定時間を超過して熱心な議論が展開されました。NEDOプロジェクト「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術」と深く関わるシリコンフォトニクスはもとより、比較的新しい学術領域であるフォノンエンジニアリングに対しても、広い意味でのフォトニクス関連分野の展開として高い関心が寄せられていることが伺えました。フォトニクス・イノベーション共創プログラムでは、今後とも光電子融合科学技術の発展に資する幅広い分野のセミナーを企画していきますので、奮ってご参加ください。

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    2019年01月29日

    概要

    2019年2月28日(木)に、第15回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催いたしました。今回は、東北地区で開催する初のセミナーでしたが、熱心に聴講する多くの方々に参加いただき会場はほぼ満席となりました。テーマは『フォトニクスの最先端』で、トポロジーやバイオイメージングなどの最先端フォトニクスを取り上げました。近年注目を集めているトポロジカルフォトニクスの基礎、および誘導ラマン散乱を用いた生体のイメージング計測についての講義を通し、フォトニクス関連分野の発展を担う人材の育成を目指した企画でした。

    冒頭に主催者を代表して荒川泰彦特任教授の趣旨説明があり、引き続き東京大学生産技術研究所准教授の岩本敏先生より「トポロジカルフォトニクス:トポロジーを活用した光制御」と題して、トポロジカル物性科学の概念を電磁波の制御やデバイス応用に利用しようとする試みであるトポロジカルフォトニクスについての講義が行われました。トポロジカルフォトニクスの概要紹介に続き、波数空間でのトポロジー”バンドトポロジー”についてその概念を理解しやすいように渦などの例えを交えて解説いただきました。さらに、トポロジカルな特徴が異なるものの接合境界にエッジ状態が現れる”バルク-エッジ対応”の解説をふまえ、一次元フォトニック結晶におけるトポロジカルナノ共振器の実現例や二次元系での光トポロジカル相の実現例など、特異な状態を活用した光デバイスの可能性について集積フォトニクスのプラットフォームにおける研究が進展していることが紹介されました。

    続いて、東京大学大学院工学系研究科准教授の小関泰之先生による「誘導ラマン散乱による生体の振動分光イメージング」と題する講義が行われました。まず、主に生体の可視化手法の一つとして開発されてきた誘導ラマン散乱(SRS)顕微法の原理と特徴について、類似手法との比較をふまえてご説明いただきました。続いて、それらの特徴を活かした高速・多色SRS顕微鏡システムの開発、またその応用例としての微細藻類の代謝物イメージングといった先生のご研究成果が紹介され、従来手法に対する優位性が示されました。さらにはSRS顕微鏡光源としての低雑音ファイバーレーザーの研究開発、量子光源による感度向上の試みなどが紹介され、SRS顕微法の更なる高性能化に重要な役割を果たすフォトニクス・レーザー技術への期待について述べられました。

    閉会挨拶ではまず技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)の田原修一専務理事よりこのセミナーの意義と、当日も会場の大半を占めた学生や若手研究者など次世代を担う若い世代への期待が述べられました。最後に、東北大学教授の山田博仁先生よりセミナーの東北地区巡回開催に対するたいへん好意的なご意見と、今後のさらなる発展に期待を込めたご要望をいただきました。予定された講義時間を大幅に超過しても活発な質疑応答や議論が行われ、光技術・光科学関連分野における人材育成事業の重要性を再認識する機会となりました。今後とも、光電子融合科学技術の発展に資する基礎的な解説から革新的・実践的応用展開の紹介まで幅広い分野のセミナーを企画・実施いたしますので、奮ってご参加ください。

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    2018年11月13日

    概要

    2018年12月3日(月)に、シリコンフォトニクスと関連する光電子融合技術およびナノフォトニクスに関する国際シンポジウムISPEC2018と共同開催で、第14回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催しました。同国際会議は海外の著名研究者を多数招聘して開催され、近年大きな注目を集めているシリコンフォトニクスの最新研究開発動向をグローバルな視点で俯瞰することのできる貴重な場となりました。セミナー開催日の参加者数はほぼ会場の定員に近い166名と、たいへんな盛会となりました。

    講演は、本分野のパイオニアであり研究開発を牽引するマサチューセッツ工科大学(MIT)のL.C.Kimerling教授とカリフォルニア工科大学のK.Vahala教授による2件で構成されました。技術研究組合光電子融合基盤技術研究所の田原専務理事の開会挨拶、主催者である東京大学の荒川教授のKeynote講演に引き続き登壇したKimerling教授は、光電子融合実装技術のロードマップと光電子集積プラットフォームのサプライチェーン形成スケジュールについて現状と課題を示されました。特に、米国におけるシリコンフォトニクス分野の国家プロジェクトであるAIM Photonicsにおいて新しい市場のニーズに見合う集積技術の開発が進んでいることを説明し、コンポーネントの共通化を進めてサプライチェーンを構築することの重要性を強調されました。

    次に登壇したVahala教授は、光学素子と電子回路のいずれとも集積可能であり、光電子融合SoC(System-on-a-chip)の実現にも役立つと期待される小型光周波数コムについて、その歴史および物理を解説されるとともに最新の応用に関する研究成果を紹介されました。超高Q値光微小共振器と誘電体光導波路を集積したソリトン型モード同期微小光周波数コムが、いかに革新的な小型高性能周波数標準として有望であるか、新しい活用法(光原子時計やLIDAR、太陽系外惑星探査など)を多数示して強調されました。

    シリコンフォトニクスの社会実装に向けた産業化への重要な提言を含むKimerling教授のご講演と、関連光技術の研究の最先端を紹介されたVahala教授のご講演、異なる二つの視点からそれぞれフォトニクス分野のイノベーションに対する貴重な手がかりを得られたセミナーとなりました。

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    2018年10月02日

    概要

    2018年10月24日(水)に、第13回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催いたしました。今回は、京都大学工学研究科附属光・電子理工学教育研究センターとの共催を含め関西地区で開催する初のセミナーでしたが、78名と各方面から多くの方々に参加いただき、京都市内を一望できる会場は熱心な聴衆で満室となりました。テーマは『光コム基礎から応用、シリコンフォトニクス最新動向』で、光波を自在に操作するツールとして期待される光コム技術の基礎と応用、NEDOプロジェクトの成果を中心としたシリコンフォトニクス集積回路の最新動向についての二つの講義で構成しました。

    冒頭に主催者を代表して荒川泰彦特任教授の趣旨説明があり、引き続き電気通信大学教授、JST ERATO知的光シンセサイザ研究統括の美濃島薫先生より「光コムによる光波の自在操作と周波数物差しを超えた応用展開」と題して、超短パルスレーザで作られる光コム(光周波数コム)の原理と応用展開についての講義が行われました。まず、光コム技術の歴史的背景から始まり、その性質や活用法の分類などの基礎的事項について解説いただきました。そして、高精度の周波数標準「光の物差し」としての用途にとどまらず、環境計測・産業計測・天文などの広範な分野において新たな応用が生まれていることが示されました。特に光コムの性質を生かした応用例として、超高速・超精密複素分光技術や広範囲高精度瞬時三次元イメージング技術などが紹介され、次世代の基盤技術としての期待が述べられました。

    続いて、技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA) 研究統括部長の中村隆宏様による「シリコンフォトニクス集積回路トランシーバと今後の動向」と題する講義が行われました。PETRAが実施するNEDOプロジェクトおよび革新的デバイス技術開発の概要説明に続いて、シリコンフォトニクス集積トランシーバ開発の背景、利点ならびに従来の課題が提示されました。それらを受けて、PETRAにおいて開発され2017年設立のアイオーコア社により生産・販売される高温動作可能な小型・低消費電力の光I/Oコアの技術解説があり、競合シリコンフォトニクストランシーバに対する優位性が示されました。さらに、より小型・高速化に向けた光変調器および受光器の要素技術や研究開発動向が紹介され、今後の展望について述べられました。

    予定された講義時間を超過しても活発な質疑応答や議論が行われ、関西地区における光技術・光科学への関心の高さを改めて実感できる機会となりました。今後とも、光電子融合科学技術の発展に資する基礎的な解説から革新的・実践的応用展開の紹介まで幅広い分野のセミナーを企画・実施いたしますので、奮ってご参加ください。

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    2018年06月25日

    概要

    2018年6月15日(金)に、第12回フォトニクス・イノベーションセミナー(テーマ:『だれにでもわかる量子情報』)を開催いたしました。参加者は55名で、活気ある議論が行われました。今回は、最近注目が高まっている量子情報技術、その中でも特にフォトニクスと関連が深い量子鍵配送および光量子コンピューターを題材とした講義が行われました。

    最初の講義は、東京大学光量子科学研究センター・センター長の小芦雅斗教授より「量子鍵配送のセキュリティ:Why and How」と題して、量子力学を利用した暗号通信である量子暗号、量子鍵配送の安全性についての講義が行われました。盗聴行為(量子系の測定行為)は系への反作用を伴い通信内容にエラーを発生させるため、エラーがないときだけ共有したビット列を秘密鍵として採用すれば安全である、という量子鍵配送の安全性に関する従来の説明についての疑問を取り上げるかたちで、量子鍵配送の基礎から最新の研究動向にいたる丁寧な解説が行われました。後半では、測定の反作用とは無関係に、またエラーの多寡をモニターしなくても量子力学を使って秘密鍵を作ることができる、RRDPS方式と呼ばれる量子鍵配送の新しい方式と、その安全性の根拠をわかりやすく紹介していただきました。

    続いて、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の武田俊太郎助教による「光量子コンピューターの基礎から応用まで」と題する講義が行われました。近年注目を集めている量子コンピューターには、超伝導回路を用いたものなど様々な実装方式が提案されていますが、今回のご講演では、室温・大気中でも動作し、通信にも利用できるという光の特徴を活かした光量子コンピューターについて解説していただきました。基礎的概念の解説に始まり、その実装方式の典型例およびその課題が紹介された後、それらを克服しうる新方式のご提案の技術解説へと話が展開されました。光の振幅・位相の自由度を用いて「任意の実数の重ね合わせ」の情報を処理する新方式では大規模計算への拡張も可能であり、ループ型光回路を用いることでスケーラブルかつプログラマブルな光量子コンピューターが実現できるというご説明をいただきました。

    質疑応答と講義終了後の議論も白熱し、今回の参加者が自らの関心に応じてより理解を深めようと努めていることが伺えました。今後とも、このように光電子融合科学技術の発展に資するテーマのセミナーを企画させていただきますので引き続きご活用ください。

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