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    2018年06月25日

    概要

    2018年6月15日(金)に、第12回フォトニクス・イノベーションセミナー(テーマ:『だれにでもわかる量子情報』)を開催いたしました。参加者は55名で、活気ある議論が行われました。今回は、最近注目が高まっている量子情報技術、その中でも特にフォトニクスと関連が深い量子鍵配送および光量子コンピューターを題材とした講義が行われました。

    最初の講義は、東京大学光量子科学研究センター・センター長の小芦雅斗教授より「量子鍵配送のセキュリティ:Why and How」と題して、量子力学を利用した暗号通信である量子暗号、量子鍵配送の安全性についての講義が行われました。盗聴行為(量子系の測定行為)は系への反作用を伴い通信内容にエラーを発生させるため、エラーがないときだけ共有したビット列を秘密鍵として採用すれば安全である、という量子鍵配送の安全性に関する従来の説明についての疑問を取り上げるかたちで、量子鍵配送の基礎から最新の研究動向にいたる丁寧な解説が行われました。後半では、測定の反作用とは無関係に、またエラーの多寡をモニターしなくても量子力学を使って秘密鍵を作ることができる、RRDPS方式と呼ばれる量子鍵配送の新しい方式と、その安全性の根拠をわかりやすく紹介していただきました。

    続いて、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の武田俊太郎助教による「光量子コンピューターの基礎から応用まで」と題する講義が行われました。近年注目を集めている量子コンピューターには、超伝導回路を用いたものなど様々な実装方式が提案されていますが、今回のご講演では、室温・大気中でも動作し、通信にも利用できるという光の特徴を活かした光量子コンピューターについて解説していただきました。基礎的概念の解説に始まり、その実装方式の典型例およびその課題が紹介された後、それらを克服しうる新方式のご提案の技術解説へと話が展開されました。光の振幅・位相の自由度を用いて「任意の実数の重ね合わせ」の情報を処理する新方式では大規模計算への拡張も可能であり、ループ型光回路を用いることでスケーラブルかつプログラマブルな光量子コンピューターが実現できるというご説明をいただきました。

    質疑応答と講義終了後の議論も白熱し、今回の参加者が自らの関心に応じてより理解を深めようと努めていることが伺えました。今後とも、このように光電子融合科学技術の発展に資するテーマのセミナーを企画させていただきますので引き続きご活用ください。

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    2017年11月15日

    概要

    2017年12月11日(月)に、シリコンフォトニクスと関連する光電子融合技術およびナノフォトニクスに関する国際シンポジウムISEPC2017と共同開催で、第11回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催しました。
    講演は、本分野のパイオニアであり研究開発を牽引するMITのL.C.Kimerling教授とUCSBのJ.Bowers教授による2件で構成されました。主催者である東京大学の荒川教授のKeynoteスピーチと技術研究組合光電子融合基盤技術研究所の田原専務理事の挨拶に引き続き登壇したKimerling教授は米国における当該分野の国家プロジェクトであるAIM Photonicsに関して、シリコンフォトニクス分野がもたらす将来のICT社会へのインパクトを説明し、集積技術のみならず標準化や市場とビジネスプラットフォームの形成を目指し、フォトニクス分野として大きなチャレンジとなるファブレスビジネスのサプライチェーン形成の重要性を強調されました。
    その上で、AIM Photonicsが目指す技術とビジネスプラットフォーム形成のロードマップを丁寧に説明されました。

    次に登壇した、Bowers教授は、光電子集積において重要となる光源技術に関して低消費電力性が重要との観点から、量子ドットレーザとそのシリコンフォトニクス光源としての集積技術に関して最近の成果を交えて説明されました。特に注目を集めたのは、量子ドットレーザが従来の量子井戸レーザに比較して劣化の誘因となる格子欠陥の形成と増殖の影響が低いという実験結果と解釈でした。

    2つの講演は、シリコンフォトニクスと最新技術の紹介に留まらず、社会実装に向けた産業化への重要な提言を含んでいました。

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    2017年08月17日

    概要

    2017年10月4日(水)に、第10回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催致しました。『光集積回路の基礎と最新技術』をテーマとしたセミナーに51名が参加をして、熱心に聴講し、議論を深めました。 今回は、光集積回路技術について、基礎から最新の技術展開について取り上げ、光導波路型集積回路の設計、応用展開に関する基礎的な内容と最新の共振器量子電気力学(Cavity QED)の今後の展開という光集積回路技術を俯瞰的に理解して、今後の技術の発展と応用展開に活かしていただくことを目指した企画となっています。

    最初の講義は、光導波路および微小光学研究の世界的な権威である横浜国立大学の國分泰雄教授より「導波路型光機能デバイスの基本原理と集積化」と題して、導波路型波長フィルターを中心とした内容となりました。 導波路型波長フィルターは、1980年代から今日に至るまで波長多重技術の中核的なデバイスとして、様々なシステムからの要求を満たすための努力がなされて、多様なデバイスが開発されてきました。これらについて、基本原理とデバイス構造および形成プロセスについて丁寧な解説が行われました。

    特に、アレイ型導波路グレーティング(AWG)とマイクロリング型フィルター、マッハツエンダー干渉フィルター(MZI)を取り上げ、それぞれの光学的な性質とその改質のための原理と手法について説明されました。最近のシリコンフォトニクスにも言及し、今後の光導波路デバイスの展望を示されました。

    続いて、東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の太田泰友特任准教授による「固体共振器電気力学の基礎と超低消費電力光源への展開」についての講義が行われました。共振器電気力学(Cavity QED)は、元々共振器内の孤立した原子と光子の相互作用から生じる非古典的な光学現象として脚光を浴び、発光現象の制御性から応用展開が期待されていました。

    最近、フォトニック結晶技術で微小な共振器構造が実現できるようになり、人工原子としての量子ドットをフォトニック結晶内に集積できるようになったことでCavity-QEDの固体装置化が可能になった経緯について紹介がありました。 Cavity QEDの理論的な取り扱いについて簡潔に説明された後に、実際の光源応用に話が展開されました。 Cavity QED構造の制御で発現するパーセル効果、超蛍光、ボーズアインシュタイン凝縮、自然放出/誘導放出制御などについての解説とデバイス応用、特に低消費電力光源について、光配線からの期待に照らしてその性能と有意性を指摘されました。

    講義終了後も。講師と参加者の間で議論が交わされ、この分野に高い関心があることを物語っていました。

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    2017年04月28日

    概要

    2017年6月16日(金)に第9回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催いたしました。今回は、東京大学駒場IIキャンパスにある有形登録文化財である第13号館(旧東京帝国大学航空研究所本館)講堂を会場として、各方面から68名に参加していただきました。テーマは、ポストムーア時代のブレークスルー技術としての視点から、シリコンフォトニクスの進展と今後の展望についてで、2件の講義が実施されました。

    主催者を代表して、荒川泰彦教授よりの挨拶と趣旨説明に続いて、国立研究開発法人産業技術総合研究所の山田浩治グループ長による「ポストムーア時代のシリコンフォトニクス」と題した講義が行われました。冒頭のクラウドコンピューティング時代のデータ処理のデマンドとムーア則の飽和に対するシリコンLSIのチャレンジに加えて、光技術の活用がムーア則の限界を越えるアプローチとして有用であることを示されました。小型化や低消費エネルギー化と性能と消費エネルギーのトレード・オフの課題を軸にシリコンフォトニクス技術の方向性を説明されました。また、最近のシリコンフォトニクス要素デバイスの開発状況の紹介と製造に関わる課題が示されました。今後取り組むべき課題として、SiN系導波路やプラズモニクスなどの新技領域と同時に産業化に向けてデザインツールやファンドリーを含めたビジネスシステムの構築の重要性が述べられました。
    続いて、東京大学大学院工学研究科電気系工学専攻の竹中充准教授より、「異種材料集積を用いたSiフォトニクス」と題した講義が行われました。SiフォトニクスはLSIで用いられるCMOSプロセスを活用できることを長所とするという観点を維持しつつも、デバイスの性能向上に向けては、異種材料集積技術が有用であることをGe/Siや化合物/Siを例に説明が展開されました。 受光素子としてのGeの有用性やレーザ光源の可能性が最近の研究成果を例に説明されました。また、化合物半導体についても最近のMOS型トランジスタ技術を紹介され、Siとの材料集積がSi-LSIにおいても進展しつつあることから、Siフォトニクスにおいても受光素子や発光素子としての化合物半導体/Si集積が有望であると述べられました。

    2000年代初頭に、Siフォトニクスの研究が開花して、製品化が始まった今日において、改めてシリコンフォトニクス技術の将来に向けた有益な情報が詰まったセミナーとなりました。

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    2017年03月14日

    概要

    NEDOプロジェクト「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」の成果の社会実装に向けた将来ビジョン形成を目的として、フォトニクスイノベーション・ビジョンワークショップを開催しています。2017年5月22日(金)に、第3回フォトニクスイノベーション・ビジョンワークショップ「AI-IoT時代に向けたコンピューティング技術とフォトニクス」を開催しました。ビッグデータ時代を迎えて、サイバーと実世界の融合したサーバーフィジカルシステム(Cyber-Physical-System: CPS)が、新たな社会変革と価値創造のプラットフォームになると期待される中で、その中核的技術である人工知能(AI)をはじめとするコンピューティング技術が発展し、それを支えるコンピュータやLSIなどのハードウエアの進化が期待されています。これらの状況を俯瞰的に見ながら、フォトニクス技術に求められる期待とその達成のための課題について議論を行い、将来ビジョンの醸成を行いました。

    国立情報学研究所(NII) 所長/東京大学生産技術研究所 教授の喜連川優先生より、NIIの本分野における活動の紹介があり、学術情報ネットワークSINET-5の経験を踏まえて、光ネットワークの大容量化への期待が示されました。今後は、センサーとデータ処理の融合された世界を形成することで新たな価値創造を起きることを述べ、モデル計算の深化が重要であることを指摘された。データ処理もDomain Specific Architectureにシフトすると述べた。松尾豊先生は、人工知能(AI)研究の立場から、機械学習の発展の経緯を紹介したのちに、最近の深層学習の進展について述べて、強化学習を組み合わせることで様々な状態を認識できることについて画像認識を例として説明された。特に、意味理解の発展が続くとされた。また、データの簡易が計算精度高めるという結果についても触れ、コンピューティング能力とアルゴリズムの補完性について興味深い示唆を述べられた。中村宏先生は、日本の最高速スーパーコンピュータである、東京大学情報基盤センターのOakforest-PACSについて詳細に紹介がされた。従来の科学計算に加えて、データ解析やシミュレーションにも対応するビッグデータ時代のスーパーコンピュータである。今後は計算科学とデータ科学の融合の時代であると述べられ、機械学習とシミュレーションの融合への取り組みの重要性を指摘して、アプリケーション毎にスライシングした計算サービスの必要性についても指摘された。平本先生は、LSIの過去の進展をITRSのロードマップを示しながら解説された。微細加工は、10nmにまで進化して、LSIにおけるトランジスタ密度は増大し続けていることのデータを示された。今後のIoTへの応用を考慮して、センサーなどの低消費電力、ことにエネルギー・ハーべスティングに対応する低駆動電圧や従来の大量生産から多様で中量製造といった変化から、新たなロードマップの評価軸が必要になることを強調された。PETRAの森戸氏からは、コンピュータ内のボード集積光配線技術について最近の成果が述べられた、ファイバや配線の省スペース化と広帯域化のための波長多重(WDM)方式の重要性が強調された。

    続いて、東京大学の岩本先生の進行で進められたパネルディスカッションにおいては、広帯域化をはじめとするIoTやデータ処理のためのクラウドコンピューティングにおける光技術への期待が寄せられた。新たな実世界とサイバー空間が融合する世界では、サービスとテクノロジーの融合が進む中で、今後の技術開発と産業構造の新たな展開についての議論もあり、参加者からの多くの質問やコメントも交えながら白熱したワークショップとなりました。光電子融合技術の社会実装に向けた将来ビジョンの形成に向けた充実した内容となりました。

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    2017年01月07日

    概要

    2017年2月22日(水)に、第8回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催いたしました。
    『次世代データコムに向けたフォトニクス技術』をテーマとしたセミナーに54名が参加しました。今回のセミナーは、IoT時代を迎えて益々情報処理能力と情報伝送帯域の増大が進むなかで、期待される次世代データコムをテーマとして、2つの講義から構成しました。 データコム自身は、データセンター間を結ぶ広域ネットワークから、構内LAN、データセンター内ネットワーク、データセンター内のサーバー内のネットワークに至るまでの幅広い領域をカバーしますが、特に期待が大きいデータセンター内、サーバー内のデータコムを中心的に取り上げています。

    講義は、この分野で産業界、アカデミアでそれぞれ活躍されているお二人の講師によって行われました。 冒頭の主催者を代表しての荒川教授による趣旨説明に引き続き、日本オクラロ株式会社 執行役員・CTOの井上宏明様より、「次世代データコムに向けたフォトニクス」と題しての講義がありました。大規模データセンターの構築が急速に進む中で要求されるデータコムの光トランシーバ技術について、光トランシーバ―の変遷をそのモジュール構成とデバイスやアッセンブリ技術の進展を説明された後に最新の100Gbイーサーモジュールについての解説と次世代の光トランシーバ―である400Gbイーサーモジュール構成や光変調方式について紹介があり、将来に向けた技術開発の指針を示されました。
    二人目の講師である、東京工業大学 工学院 電気電子系の西山准教授は、『Inter/Intra チップ光回路に向けた異種基板接合半導体レーザ技術』と題して、LSI間およびLSI内の光配線によるLSIの処理能力の限界の打破に関して、シリコンLSIと化合物半導体光デバイスの集積技術について講義をされました。 チップ間の光配線に向けたは、化合物半導体光デバイス、特に半導体レーザや受光器を異種基板接合技術によって集積技術について解説して、最新の成果を紹介されました。 また、チップ内光配線において光配線の低消費電力化の重要性を強調され、薄膜(メンブレン)構造をもつ半導体レーザの有用性について理論と試作検証の成果を示されました。

    それぞれの講義に対して、データコムへの高い関心から、光トランシーバの今後の技術トレンドやシリコンLSIと化合物半導体光デバイスの集積技術の進展についての詳しい内容に関しての質疑が展開されました。
    今後とも、フォトニクス技術の新たな情報通信技術、更にその上位レイヤーへの展開とそのインパクトに関するセミナーを企画、実施していきますので、引き続きご活用ください。

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    2016年10月27日

    概要

    2016年11月28日(月)国際シンポジウム The 6th International Symposium on Photonics and Electronic Convergence (ISPEC 2016)の開催に合わせて、世界最先端のシリコンフォトニクスの研究開発に関する講演を第7回フォトニクス・イノベーションセミナーとして共同開催致しました。200名を超える参加で、会場が熱気に包まれる中での開催となりました。

    セミナーのプログラムは、ISPEC2016のプレナリーセッションにおける「シリコンフォトニクスの最先端」に関するプレナリー講演2件で構成されました。講演者のMITのL. C. Kimerling教授はシリコンフォトニクスのパイオニアとして本分野の研究開発をけん引しており、今日の北米におけるシリコンフォトニクス研究で中心的な役割を果たしています。 ”Grand Challenges and Timelines for Electronic-Photonic Integration”と題した講演は、これからの社会に浸透するであろうCyber-Physical-Societyを見据えて、コンピューティングの配線ボトルネック問題の解決策としてのシリコンフォトニクス技術を基盤とした光インターコネクションの重要性とそれを社会実装するための教育プログラムやビジネスエコシステムにも言及する当該分野を俯瞰的にレビューすると同時に、今後のこれらの 技術の発展と社会的浸透に関するロードマップが示されました。

    また、最先端のCMOSプラットフォーム上のシリコンフォトニクス光電子集積技術の研究者として活躍されているIBM T. J. Watson LaboratoryのD. M. Gill博士は、”Short Reach Data Link Transmitter Figures of Merit and Monolithic CMOS Compatible Photonic/Electronic Platform”のタイトルの講演で、シリコンフォトニクス技術の産業的な応用展開の視点で、シリコンフォトニクス集積型光トランシーバ技術の高速化についてIBM T.J.Watson Lab.の取組について解説されました。特に、シリコンフォトニクスにおいてはマッハツェンダー型光変調器やリング型変調器を例に挙げてFigure-of-Merit(FOM)に関する詳細な解説を展開しました。

    今日、25Gbps以上の高速変調が実現し、光インターコネクションがコンピューティングを中心に幅広く集積化されて実装されることが現実感を得てきたことを示されました。また、本セミナーの参加者は、ISPEC2016のセッションでも熱心に聴講をされました。
    このように、今回の第7回フォトニクス・イノベーションセミナーおよびISPEC2016を通じて、シリコンフォトニクスおよび光電子融合科学技術に関わる最新の研究開発に触れえる場を提供し、本分野への関心を高め、技術的理解の向上に資することができました。

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    2016年09月05日

    概要

     

    10月7日(金)に第6回フォトニクス・イノベーションセミナーを開催いたしました。
    『革新的光電子集積技術』をテーマとしたセミナーに、65名の参加者がありました。今回のセミナーは、ナノフォトニクスである「プラズモニクス」と「フォトニック結晶」を取り上げました。 これらの技術は、従来の光集積回路の基礎となる誘電体系導波路技術の性能限界、例えば回折限界などを克服することができることから、将来の光電子集積技術の発展に大きく寄与することが期待されています。

    この分野で世界の第一線で活躍されているお二人の講師による講義が行われました。冒頭の趣旨説明に続いて、大阪大学フォトニクス先端融合研究センター教授の高原淳一先生から、「プラズモニクスの基礎とナノ光集積回路への展望」と題しての講義がありました。プラズモン物理からプラズモニクスに至る歴史から紐解き、プラズモニクスの基礎となる表面プラズモンについての分散関係に関する詳細かつわかり易い解説されました。特に、エバネッセント波が回折限界を越える性質を有することを強調され、超収束などの新たな光学的性質の発現が期待できることを紹介されました。

    会場からは、プラズモニクスデバイスの設計方法などについての質問があり、将来の光電子集積技術への展開への期待感が高いことをうかがわせていました。 続いて、京都大学大学院工学研究科准教授の浅野卓先生から「フォトニック結晶デバイスの基礎と光子操作への応用」と題する講義がありました。フォトニック結晶の基本的性質であるフォトニックバンドギャップに関するわかり易い説明の後に、フォトニック結晶構造、特に2次元フォトニック結晶スラブ構造を用いた光子操作に関する紹介がありました。

    例えば、欠陥導入による波長合分波デバイスについては、フォトニック結晶構造の作製方法から32チャネルの波長合分波の実験結果までを系統的に示されました。 その他、Siラマンレーザーや高Q値フォトニック結晶、電流注入による動的な位相制御など将来の光電子集積技術として魅力ある性質について紹介されました。会場からは、フォトニック結晶構造の改質に関する質問や表面処理などに関する質問があり、応用展開を考えるきかっけとなる講義となったように感じられました。

    シリコンフォトニクス技術をはじめとする光電子融合科学技術の発展には、これまでの光学素子の限界を打破する物理と技術が求められます。特に、高集積密度やコンパクト化においては回折限界を越える光学的性質や相互作用長の短いデバイス構造などに期待があります。
    今後とも、このように光電子融合科学技術の発展に資するテーマのセミナーを企画させていただきますので引き続きご活用ください。

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    2016年07月19日

    概要

    8月18日に開催された第5回フォトニクス・イノベーションセミナーは、デジタル信号処理と光電子集積技術について、2つの講義形式の講演が行われました。当日は、台風の到来で荒天にもかかわらず、42名の参加者が熱心に聴講し、質疑が行われ盛況のうちに終了しました。

    最初に、東北大学大学院工学研究科教授の山田博仁先生より、光電子システムに関して、「デジタルコヒーレント通信と光電子集積」と題しての講義で、光のコヒーレンシーと光通信の変調方式に関わる基礎の講義に始まり、デジタル化処理の果たす役割と発展が解説され、デジタルコヒーレント受信機の光電子集積の期待と課題が述べられました。

    続いて、東京大学生産技術研究所光電子融合センター准教授の岩本敏先生からは、光電子集積の基礎講座として、「フォトニック結晶の基礎:その物理と数値解析」と題しての講義で、フォトニック結晶の構造とそれが発現する光学的性質に関する基礎的な物理が述べられたのちに、設計手法についての詳細な説明があり、既存のソフトウエアを用いた設計においての留意すべき点など実践的な内容にも踏み込んだ講義となりました。

    デジタル信号処理の発展とDSPチップ化によりデジタルコヒーレント通信は、大容量の光通信の発展を推進してきました。NEDOプロジェクト「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術」においても、低消費電力型のデジタルコヒーレントチップの開発が行われて商用化されています。益々、多様化する変調フォーマットに対して、シリコンフォトニクス集積に向けた新たな課題と方向性が示され、今後のこの分野の発展に資する講義であったと言えます。 また、デジタル信号処理とは一見相容れないように思われるフォトニック結晶技術ですが、新たな光信号処理を探索 するうえで微小光学素子や量子光学的な考え方の導入することが期待されるところで、今後のこの分野の発展が光電子集積にも波及することを感じる講義となりました。フォトニクス・イノベーション共創プログラムでは、今後とも光電子融合科学技術に関わる実践的技術と革新的科学技術に関する基礎から応用までの幅広い展開を分野のセミナーを開催していきますので、奮ってご参加ください。

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    2016年06月13日

    活動報告

    NEDOプロジェクト「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術」の成果活用と人材育成を目的とした‟フォトニクス・イノベーション共創プログラム」の活動の一環として実施しました。 今回のワークショップの趣旨は、IoT時代を迎えて重要性が高まるコンピューティングについて様々な視点から次世代コンピューティングの姿をと光電子集積技術の活用についてのビジョン形成を目指しました。

    NEDO・IoT推進部の都築部長より、IoTに関する最新の動向とNEDOの取組が紹介され、政策的にも重要な分野の位置づけであること示されました。東京工業大学の松岡教授は、ムーア則が破たんすることを見据えたポストメニコア化のスーパーコンピュータアーキテクチャ像を示され、光配線ネットワークへの期待を述べられました。 NTT未来ねっと研究所の川村所長から、IoT時代にリアルタイム性やセキュリティ性の高いリアルタイム性やセキュリティ性の高いコンピューティングの要求からみたエッジコンピューティングについての紹介とアーキテクチャ像が示されました。 アプリケーションの視点から、NECデータサイエンス研究所の佐藤主席研究員は機械学習と画像認識について大量データ対応の重要性を指摘しました。 光集積技術について、PETRAの臼杵主管研究員は、シリコンフォトニクスに関する最近の成果を紹介したのちにコンピュータ内部の光インターコネクションのケーススタディを示されました。 引き続き行われたパネルディスカッションにおいては、さらに講演内容に関する議論が行われ、IoT時代に向けたデータ処理指向のコンピューティングに関する議論が進み、光集積技術により達成されるべき性能指数が提示されました。

    以上のように、コンピュータアーキテクチャ、ネットワークコンピューティングおよびビッグデータ処理とシリコンフォトニクスを中心とする光電子集積技術の分野を越えた議論により光配線ネットワークなどの光電子集積技術の将来ビジョンに資する交流と議論の成果が得られました。

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